ジョシュア・レイノルズとその時代:肖像画、グランド・ツアー、そして芸術への影響?レイノルズと18世紀芸術:肖像画に見る時代精神
18世紀、英国貴族のグランドツアーと肖像画の世界へ! 新古典主義、ファッション、そして社会の変化を映し出すジョシュア・レノルズの傑作。東洋風衣装の肖像画や、人種と文化を問いかける『Portrait of Mai (Omai)』。ロサンゼルスとロンドンの美術館が共同購入した、美術史的にも貴重な作品に注目!2028年のロサンゼルス五輪での展示も決定。
💡 ジョシュア・レイノルズの生涯と、彼の肖像画が持つ時代的背景を解説。
💡 18世紀のイギリスにおける「グランド・ツアー」と、芸術への影響を考察。
💡 レイノルズ作品に見られる、当時の社会情勢と美的価値観。
それでは、まずこの記事でご紹介する内容の概要から見ていきましょう。
イギリスにおけるグランド・ツアーとレイノルズの芸術への影響
イギリスの貴族の子弟はなぜヨーロッパ大陸へ旅した?
教養と洗練を身につけるため
グランド・ツアーを通して、当時の上流階級は西洋美術や知識に触れ、教養を深めていたのですね。
公開日:2020/11/09

✅ イギリスの上流階級の若者たちが18世紀から19世紀にかけて行った「グランドツアー」は、教養を深めるための修学旅行のようなものでした。彼らはイタリアを中心にヨーロッパ各地を巡り、芸術作品や文化に触れ、知識人との交流を通じて成長を促しました。
✅ グランドツアーは、貴族社会への通過儀礼としての意味合いを持ち、長期間にわたる壮大な旅であり、費用も莫大でした。そのため、貴族の長男が中心に行い、次男以下は短期間の小旅行をするケースが多かったようです。
✅ グランドツアーが流行した背景には、交通網の発達やヨーロッパの戦乱の終結などがありますが、旅の目的は人それぞれでした。芸術作品や文化への憧れ、異国での自由な体験、そして風景の美しさなど、様々な動機が若者たちを駆り立てていたと考えられます。
さらに読む ⇒旅へとかき立てるもの出典/画像元: https://mimorning.com/england-grand-tourレイノルズは、このグランド・ツアーで得た経験を活かし、帰国後ロイヤル・アカデミーを創設し、イギリスの美術界に大きな影響を与えました。
18世紀のイギリスでは、貴族の子弟がヨーロッパ大陸に旅行する「グランド・ツアー」という習慣がありました。
フランスでは最新のモードやマナーを学び、イタリアではルネサンス芸術に触れることで、新古典主義建築が英国に広がっていきました。
レイノルズもイタリアで古典芸術とルネサンス芸術を学び、帰国した後、1768年にロイヤル・アカデミーを創設し、初代会長に就任しました。
彼は「グランド・マナー」を重んじ、多くの名士たちの肖像画を描きました。
壮大な旅ですね!当時の人々は、芸術と文化を通して、一体どんな心の成長を遂げたのか、とても興味があります。
ジョドレル夫妻の肖像画とレイノルズの芸術
ジョドレル夫妻はなぜ2人の画家に肖像画を依頼した?
ライバルだったから
ジョドレル夫妻の肖像画を通して、当時のファッションや芸術の流行が分かりますね。

✅ ジョドレル夫妻は、18世紀英国の画壇でライバル同士だったレノルズとゲインズバラに、自分たちの結婚肖像画を描かせました。夫の肖像画をゲインズバラが、妻の肖像画をレノルズが描きました。
✅ レノルズが描いた「リチャード・ポール・ジョドレル夫人」の絵は、妻が東洋風の衣装を着ている点が特徴的です。当時のファッションとレノルズが一般に肖像画を描いた態度が一致しており、モデルが上流階級の劇作家の妻であることを示しています。
✅ ジョドレル夫妻が肖像画を依頼した1774年は、フランス国王ルイ15世の崩御、ルイ16世の即位、そしてマリー・アントワネットが宮廷のトップに立った年です。この時代は、ロココ美術から新古典主義芸術へと移り変わる過渡期であったため、ジョドレル夫妻の肖像画は、その時代の芸術潮流を反映していると言えるでしょう。
さらに読む ⇒’美術を中心にさまざまな文化史関連本をご紹介します出典/画像元: https://hannaandart.com/entry/18c-jodrells-reynolds-gainsboroughレノルズの描いた『リチャード・ポール・ジョドレル夫人』は、東洋風の衣装をまとい、当時の異文化への憧れが反映されていますね。
ジョドレル夫妻は、18世紀英国の画壇でライバル同士だったレノルズとゲインズバラに、自分たちの結婚肖像画を依頼しました。
夫の肖像画をゲインズバラが、妻の肖像画をレノルズが描いています。
レノルズが描いた『リチャード・ポール・ジョドレル夫人』は、東洋風の衣装を着た女性の姿を描いています。
これは、当時のファッションが近東の影響を受けていたことと、レノルズが肖像画に象徴的な意味を持たせようとしたことが関係していると考えられます。
肖像画に象徴的な意味を持たせることで、当時の社会や文化を表現するというのは面白いですね。ただ、どこまで真実を伝えているのか、客観的な視点も必要だと思います。
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