ナリニ・マラニ、インドのビデオアートの先駆者?社会問題を映し出す芸術京都賞受賞、社会への問い、世界が認めた芸術家の軌跡
インドの現代美術家、ナリニ・マラニ。インド・パキスタン分離独立を経験し、社会問題への鋭い視点を持つ彼女は、ビデオアートを中心に、抑圧された人々の声を描き出す。伝統的な神話と最新技術を融合させ、夢幻的な空間を創造。2023年京都賞受賞。カースト制度やジェンダー問題等、現代社会の闇を浮き彫りにし、世界を魅了し続けている。
💡 インドの現代美術家、ナリニ・マラニは、インド社会におけるカースト制度や女性問題など、社会的なテーマを作品を通して表現しています。
💡 彼女はビデオアートの先駆者として、多種多様なメディアを駆使し、抑圧された人々の声に耳を傾け、世界的に高い評価を得ています。
💡 2023年には、芸術分野における長年の功績が認められ、京都賞を受賞。その受賞理由と彼女の作品が持つ意味を探ります。
本日は、ナリニ・マラニというアーティストについて、彼女の生い立ちから、作品、そして京都賞受賞に至るまでの道のりをご紹介していきます。
それでは、まず彼女の芸術を通して何がわかるのか、ポイントを3つにまとめました。
ナリニ・マラニの生い立ちと芸術への道
ナリニ・マラニは何を表現するために作品に取り入れましたか?
カースト制度の現実
ナリニ・マラニの生い立ちを振り返ることで、彼女の芸術観がいかに形成されたのかを紐解いていきましょう。

✅ ナリニ・マラニは、インドの階級社会や格差を作品に取り込むアーティストであり、それは生物学の先生から学んだ「ドローイングはコミュニケーションのためのツール」という考え方に基づいている。
✅ 先生は、解剖した動物の身体構造だけでなく、自然界のシステムをドローイングで示し、生物間の依存関係を視覚的に説明していた。
✅ フランス留学後、インドという複雑な社会構造、特にカースト制度に目を向け、その不平等なシステムを作品を通じて可視化することを決意した。
さらに読む ⇒美術手帖出典/画像元: https://bijutsutecho.com/magazine/interview/28164カースト制度という固定的で崩しがたい制度に焦点を当てたという点は、彼女の作品が持つ社会的なメッセージ性を強く感じさせます。
自身のルーツであるインド社会への深い洞察と、それを表現する決意が素晴らしいですね。
ナリニ・マラニは、1946年イギリス領インド帝国(カラチ、現パキスタン)生まれのインドの現代美術家です。
幼少期にインド・パキスタン分離独立に伴う難民生活を経験し、その後インドで美術を学び、パリに留学しました。
彼女は生物学の先生から受けた解剖の授業をきっかけに、絵を描くことのコミュニケーション的な側面に気づき、自分が思い描くシナリオを視覚化して伝えたいと考えるようになりました。
自然がどのように成り立っており、人間が自然に依存し、同時に影響を与えるかを学んだ経験が、彼女の表現を豊かにしています。
フランス留学を経て、祖国インドの複雑さを改めて認識したマラニは、インド社会のカースト制度という固定的で崩しがたい制度に注目し、その現実を作品に取り入れるようになりました。
彼女は、カースト制度に縛られた社会の構造や、それに起因する差別と格差を、作品を通して可視化することで、社会への問題提起を行っています。
なるほど、生物学の授業が彼女の表現に影響を与えたんですね。自然界の繋がりを学んだ経験が、社会問題への意識へと繋がったというのは、とても興味深いです。描くことがコミュニケーションのツールになるというのは、僕も共感できます。
芸術を通して社会に問いかける
マラニの作品はどんなテーマを扱っている?
宗教、戦争、ジェンダーなど
彼女の作品が、社会にどのような問いを投げかけているのか、そして私たちがそこから何を受け取ることができるのかを見ていきましょう。

✅ ナリニ・マラニは、インド、パキスタン間の宗教的、政治的緊張の中で生まれ、分割により家族が難民となったことから、歴史的、社会的な複雑さを作品に反映させている。
✅ マラニは、自分のルーツを認めながらも、過去の出来事を批判し、新しい未来のための代替案を提示したいという強い意志を持っており、現代社会が直面する課題に対して、芸術を通して独自の視点とメッセージを伝えている。
✅ 彼女は、絵画、インスタレーション、ビデオ、パフォーマンスなど、さまざまな媒体を用いて、抽象的な表現と具体的なイメージを組み合わせることで、人間の苦しみ、社会的不平等、政治的な不正義を表現し、観衆に問いかける作品を制作している。
さらに読む ⇒出典/画像元: https://ideelart.com/ja/blogs/magazine/fifty-years-of-pioneering-art-in-india-nalini-malani-at-centre-pompidou作品が、歴史的・社会的な複雑さを反映しているという点が印象的です。
現代社会が抱える問題に、芸術を通して光を当てる彼女の姿勢は、私たちに新たな視点を与えてくれます。
抽象的な表現と具体的なイメージの融合も、観る者の心に深く響くでしょう。
マラニは、インド亜大陸の近現代史と向き合い、宗教、戦争、ジェンダー、環境などの普遍的なテーマを作品に込めてきました。
特に、女性や貧困者など、抑圧に苦しむ人々の個別具体的な姿を描写することで、今日の社会に埋もれた「声なき者の声」を表現してきました。
彼女の作品は、伝統的な神話や神々のモチーフを採り入れ、ビデオ、プロジェクションといった技術を用いて夢幻的な空間を構成しています。
これまでに、ニューヨークのニューミュージアム、ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタ13など、世界各国の美術館で個展やグループ展を開催しています。
日本国内でも、東京国立近代美術館、国立新美術館などで作品を発表し、2013年には第24回福岡アジア文化賞も受賞しています。
確かに、彼女の作品は、宗教、戦争、ジェンダーなど、普遍的なテーマを扱っているんですね。でも、それらが具体的にどのような形で表現されているのか、少し抽象的で理解しにくい部分もあります。もう少し、作品の詳細について知りたいです。
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インド出身の美術家ナリニ・マラニが京都賞受賞!ビデオアートで社会問題を表現。世界を魅了する彼女の作品とは?