ヴェネチア・ビエンナーレ2024、多様性の祭典?オーストラリア先住民アーティストの躍進と国際的な評価アーチー・ムーア金獅子賞受賞と『kith and kin』の展示
2024年ヴェネチア・ビエンナーレは「Foreigners Everywhere」をテーマに、人種、ジェンダー、セクシュアリティを巡る表現が光る。金獅子賞は、アボリジナルアーティスト、アーチー・ムーアの壮大な家系図《kith and kin》が受賞。過去最大11ヶ国が参加し、先住民族の視点が際立つ。テート財団とQAGOMAがムーア作品を取得し、世界へ発信する。文化的多様性と人間のつながりを描く、記憶に残る展覧会。
💡 2024年のヴェネチア・ビエンナーレのテーマは「Foreigners Everywhere(どこにでもいる外国人)」で、アウトサイダーや移民に焦点を当てています。
💡 オーストラリアのアーティスト、アーチー・ムーアがナショナル・パビリオンで金獅子賞を受賞し、先住民族の歴史を表現しています。
💡 国際展の金獅子賞はマオリのマタアホ・コレクティブが、銀獅子賞はカリマー・アシャドゥが受賞しました。
それでは、まずヴェネチア・ビエンナーレ2024の概要と、そのテーマについてご紹介いたします。
ヴェネチア・ビエンナーレ:多様性を増す芸術の祭典
ヴェネチア・ビエンナーレ2024のテーマは?
「どこにでもいる外国人」
本日は、ヴェネチア・ビエンナーレ2024のテーマと、その背景にある多様性について解説していきます。

✅ 2024年の第60回ヴェネチア・ビエンナーレのテーマは「Foreigners Everywhere(どこにでもいる外国人)」で、アウトサイダーや外国人などを中心に、国境を超えて移動した経験のあるアーティストにスポットライトを当てる。
✅ 総合ディレクターはブラジル・サンパウロ美術館の芸術監督アドリアーノ・ペドロサで、人種、ジェンダー、セクシュアリティに焦点を当てた伝統的な美術史を斬新な視点で書き換える展覧会を数多く企画してきた。
✅ ペドロサは、モダニズムの歴史をヨーロッパや北米以外にも広げ、非欧米におけるモダニズムの進化を探求することを目指しており、南半球におけるモダニズムについての理解を深めることを重要視している。
さらに読む ⇒(アートニュースジャパン)出典/画像元: https://artnewsjapan.com/article/1201第60回ヴェネチア・ビエンナーレでは、人種、ジェンダー、セクシュアリティといったテーマが扱われ、多様な視点からの作品が展示されています。
第60回ヴェネチア・ビエンナーレは、2024年4月20日から11月24日まで開催され、フランス・パリ出身、イタリア・パレルモを拠点に活動するコレクティヴ、クレール・フォンテーヌ(ClaireFontaine)の作品に由来する「どこにでもいる外国人(ForeignersEverywhere)」をテーマに掲げています。
サンパウロ美術館のディレクター、アドリアーノ・ペドロサ(AdrianoPedrosa)が総合ディレクターを務め、人種やジェンダー、セクシュアリティをテーマにした展覧会を企画しています。
審査陣には、フェミニズムやLGBTQ+、コロニアリズム、アフリカンアメリカン・スタディーズ、トランスナショナリズムを専門とする面々が名を連ねています。
さらに、アフリカからの参加国が着実に増加し、今年は過去最大11ヶ国が参加しています。
ベナンとタンザニアは初出展となっています。
多様性って言葉は素敵ですが、実際にどんな作品があるのか、すごく興味があります!
先住民アーティストの活躍:アーチー・ムーアの金獅子賞受賞
今年のヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したアーチー・ムーアの作品の特徴は?
家系図をテーマにしたインスタレーション
次に、今年のビエンナーレで特に注目を集めた、先住民アーティストの活躍について掘り下げていきます。

✅ 第60回ヴェネチア・ビエンナーレは「どこにでもいる外国人」をテーマに開催され、先住民族のアーティストが金獅子賞を受賞するなど、近年注目されている「先住民」の存在感が際立っている。
✅ オーストラリアのアーティスト、アーチー・ムーアがナショナル・パビリオンの金獅子賞を受賞。彼のインスタレーション作品「kith and kin」は、先住民族の系譜を6万5千年以上にわたって追跡したもので、国家による先住民族に対する抑圧の歴史を浮き彫りにしている。
✅ 本ビエンナーレは、サンパウロ美術館館長のアドリアーノ・ペドロサが総合ディレクターを務め、ジェンダーやセクシュアリティ、人種など多様な問題を扱った作品群が展示されている。
さらに読む ⇒出典/画像元: https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/venice-biennale-report-202405ナショナル・パビリオンで金獅子賞を受賞したオーストラリアのアーチー・ムーアの作品は、先住民族の歴史と現代社会における課題を浮き彫りにしています。
今年のヴェネチア・ビエンナーレでは、ナショナル・パビリオンと国際展の両方で、先住民族にルーツを持つアーティストの作品が注目を集めました。
中でも、オーストラリアのアーチー・ムーア(ArchieMoore)がナショナル・パビリオンの金獅子賞を受賞しました。
ムーアは、アボリジナルのカミラロイ族とビガンブル族にルーツを持つアーティストで、自身の家系図を描き出したインスタレーション作品《kithandkin》(2024)を発表しました。
作品は、一面黒の壁面に白いチョークで無数の名前が書かれたもので、タイトルの意味する「友人と親族=親類縁者」の通り、ムーアの系譜を表しています。
ムーアは、国家に拘束されているあいだに亡くなった、先住民族たちの検死に関する書類を展示することで、自身の家系図をさかのぼりました。
書類は、故人(deceased)、検視官(coroner)といった専門用語が並ぶもので、故人への敬意から名前は黒塗りされています。
書類の山が置かれたテーブルは、床に張られた水で囲まれ、一定の距離までしか近づけません。
歴史的な出来事や、個人の系譜を作品にするというのは、少し感情的すぎる気がしますね。客観的な視点も必要なのでは?
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2024年ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞受賞作『kithandkin』を取得!オーストラリア先住民の6万5千年の歴史を描く壮大な系図。テート財団とQAGOMAが贈る、普遍的な人間の絆。